『りゅうおうのおしごと! 4』 読んだ
こんにちは、おっさんです。
全開の更新では初めて次回予告というものにチャレンジしてみました。
で、予告したからには今回の更新は、将棋のアレ。個人的に今一番アニメ化を期待している作品となります。
ということで、『りゅうおうのおしごと! 4』のレビューをしていきましょう。
http://ga.sbcr.jp/bunko_blog/wp-content/uploads/2016/09/20160905ryuoh_shoei.jpg
厳しい女流棋士の道
前巻では、研修会の年齢制限というかたちで女流棋士への道の厳しさが示されていました。 そして本作でも引き続き、女流の厳しさが語られています。
その厳しさとはただひとつ、弱いということ。
本来の意味でプロ棋士という場合、奨励会三段になり、三段同士のリーグ戦で上位に入って四段に昇段することを許された人を指します。 では女流はどのくらい強いのか、というと、なりたての女流の場合は奨励会六級より下、というのが現実です。
本来知的ゲームに男女差はないはずなのですが、少なくとも女性でプロ棋士の壁を超えた人は未だに現れていません。 現在、二人の女性が三段リーグに挑戦していますが、頑張って欲しいものですね。
将棋ファンにはよく知られた事実ですが、それだけに女流はどうしても「弱い」という扱いをされてしまうことが多いです。 だからこそ、女流として生き残るために、ルックスであったり、聞き手としての技術であったり、そしてもちろん将棋の技術であったりを磨き続ける修羅の道なのです。
進退をかけた闘い
将棋には降段の制度がないため、普通、一度将棋のプロになった場合は相当な年月はプロでいることが出来ます。 男性プロの場合は順位戦で三期、その後フリークラスで10年なので、13年強の間はプロの身分として様々な棋戦に参加する権利が保証されます。
女流の場合はこの保証がありません。 女流棋士としてプロを名乗れる最低の段級位は女流三級ですが、女流三級としてプロデビューした場合、一定期間以内(最長2年)以内に女流二級に上がらないと強制的に降級、すなわちアマチュアへの逆戻りが待っています。
その先にあるのは前巻でふれた研修会の年齢制限問題。 アマチュア落ちがそのままプロとしての引退勧告になる、ということもあり得る制度なのです。
本作でもその崖っぷちの登場人物が現れ、その心理が描かれています。 本当、女流棋士は修羅の道ですね……
輝く才能
本作のメインプロットはそんな女流の夏の祭典、マイナビ女子オープンが舞台となります。
マイナビ女子オープンは女流のタイトル戦の一つで、アマチュアや低段位の女流棋士も参加可能なオープン棋戦です。 ここで好成績を上げることができれば、研究会を経ずに女流棋士資格を得ることができるわけで、女性アマ、とくに研修会所属のアマや桂香さんのように年齢制限のせまるアマにとってはとても大きなチャンス。
つまり、参加者みんなが勝ちに向けて必死に、それこそなんでもやってくるようなそんな大会なのです。
ですが主人公であるあい、そして天衣のふたりの才能は女性としてはずば抜けています。 並み居る女流を次から次へと撫切りしていく様子は痛快の一言。
ちなみに二人にはこの大会での好成績をあげることに、ともすれば女流になるということ以上の理由があるのですが、それは読んでのお楽しみというところでしょうか。
トッププロの世界
マイナビは真夏の祭典です。
それが終われば次にあるのは「竜王戦」。 そう、主人公である八一が保持するタイトルです。
現実世界のスケジュールではこの間に王位戦や王座戦などもあって、作中で語られている名人のタイトル通算九十九期、竜王奪取で前人未到のタイトル通算百期と永世竜王位獲得がかかっている、という状況はやや疑問なわけですけど、まあ細かいところはいいでしょう。
とにかくあの棋界のラスボス、鬼畜眼鏡が本気でタイトルを取りにくる、というわけで八一のストレスはとんでもないことになっているはずです。
本作では男性同士の対局はただ一局。 竜王挑戦者をかけて神鍋七段と名人の対局です。
おそらく対極の元ネタは2012年王座戦第四局、渡辺明王座に挑戦者羽生善治三冠が挑んだ一戦です。 詰めろ逃れの詰めろ、伝説の6六銀として有名な一戦は、史実以上に熱い闘いとして描かれていました。将棋ファンとしても相当に満足。
そんなトッププロの世界ですが、どうも主人公である八一が前作の死闘を抜けて壁を超えた、一段覚醒した、という強調されていた様子が。次巻はおそらくその竜王戦本番が舞台なのでしょうが、もしかするとあの名人相手でも希望があるんじゃないか、と思わせる状態に。これはちょっとおもしろくなってきました。三割竜王じゃとても無理だと思ってたのに
小ネタ類
作中の小ネタ、それこそちょっと衝撃的だった既に成っている駒を再び成りかえらせる反則(龍を動かして飛車として打ってしまう)も、小説で出てくるとご都合主義と言われかねないのですが、これ、実話なんですよねぇ……
この他将棋ファンならばニヤリとするエピソードが相変わらず詰め込まれています。 ええ、加藤一二三九段の羽生マジック解説の「おかしいですよ」とか、中原永世十段の「突撃しまーす」とか。 というか中原ネタは大丈夫なのか、おい……
しかし棋士の奇行ネタって、これだけ書いてもまだまだ出てくるのが不思議。 どれだけ変人揃いなのかというのがこれだけでも伺えるというのがなんとも。
最期に
本編最後に師弟二人は竜王戦六年ぶりの海外対局に向けて出発しました。 日本から9時間くらいかかる場所、ということで次巻の舞台はハワイ、ハレクラニで行われたあの対局ですかね?
ハワイ、つまり水着回ですよ、次は!
次回予告
次のレビューはあの出て来る戦国武将がみんな女の子、というあの作品の予定です。 お楽しみに。
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