まだ現役。

広告業界で働くITエンジニアなおっさん、未だにラノベを読む。ラノベ以外も読むし、時にはゲームやアニメの話もする。

『君の名は。 Another Side:Earthbound』読んだ

こんにちは、おっさんです。

君の名は。』すごい勢いで興行収入積み上げていってますね。 名探偵だったり海賊だったいするあれやこれの記録を塗り替え、もう敵はジブリのみ、という状況。

僕も映画を観に行ったのですが、本当に素晴らしい出来でした。

ossan-movie.hatenablog.com

さて、本日とりあげるのは、『君の名は。 Another Side:Earthbound』。

劇場版『君の名は。』を、映画とは別の視点で切り取ったノベライズになります。

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端的に言って、映画が気に入ったのであれば読む価値があると思います。

本書の構成

本書には以下の4話が収録されています。

  • 第一話:ブラジャーに関する一考察
  • 第二話:スクラップ・アンド・ビルド
  • 第三話:アースバウンド
  • 第四話:あなたが結んだもの

それぞれ見ていきましょう。

第一話:ブラジャーに関する一考察

映画序盤は比較的三葉視点で描かれることが多かった(バイトに行ったり、パンケーキを食べてみたり、先輩と仲良くなってみたり)のですが、その入れ替わり期間の生活を瀧視点で描いた1話です。

  • 三葉(瀧)が陰口を叩くクラスメイトとどう接したのか
  • バスケとブラジャーの関係
  • 三葉が女の子にもてるようになった経緯

そんな、映画ではさらっと、こういうことが起きたよと描かれているエピソードの裏側です。

触るよね、そりゃ。わからないもんね、つけ方外し方はしってるけど。そんな話。

第二話:スクラップ・アンド・ビルド

映画の裏側の話としては、三話、四話が大事なのですが、結構衝撃というか、そうだったのかと思った第二話。

この章の主人公は勅使河原(てっしー)ですが、彼は作中でも語られているとおり、地元の土建業の息子です。そのため気軽に糸守を離れたいという友人2人にたいして、自分はここに根差すしかないという複雑な感情を持っています。

  • そんな彼がこの糸守、そして父親にどういう感情を持っているのか
  • 三葉への思い、距離感の変化

といったところがメインテーマになっています。

映画中でも語られた町長選挙応援の後、この街を爆破したい(!)とか感じていていて衝撃的でした。本編ではその願いは意外な形でかなうわけですが。 また、ここで三葉との間の距離、心情が変化しており、本編最後の作戦でどうしてすんなり受け入れたのかの伏線になっています。

第三話:アースバウンド

第四話は四葉の話です。

ある日突然おかしくなってしまった姉とどう接したらいいのか、を小学生なりの価値観で考えてみたり、おばあちゃんに聞いてみたり。

姉はいったいどうしてしまったのか、幼い四葉が自分で考えつく範囲で考察していく様はほほえましいとともに、姉の姿の中に母とのやり取りを思い出してみたりもしています。 これが次の章へのいいつなぎになってるんですよねぇ。

この話ではほかにも、

  • 宮水の日常の神事
  • 実は四葉もアレをアレしてしまっていた!(これはぜひ読んでいただきたい)

映画では宮水らしさを一切出さなかった四葉ですが、事件の裏であんなことをやっていたんですね。だから最後には姉に同調することができたというか、姉の境遇を理解できたんでしょう。

そしてきっと、母の二葉も、もしかするとおばあちゃんの一葉も、同じようなことを経験しており、姉妹のいろいろについて忘れてしまっているけど、そういうものだと理解している、という状態なんでしょうね。

第四話:あなたが結んだもの

この章の主人公は三葉の父、俊樹です。

ほかの章は映画の中のシーンを別のキャラがどう見ていたのか、という体裁ですが、この章では宮水姉妹の両親の回想が出てきます。

不思議な魅力と神通力めいたカリスマを持った母二葉、そこにやってきた若き日の俊樹。 出会いからひかれあい、二葉に至っては一目見た瞬間にはこの人と結婚するんだと感じていたとのちに語っています。

それはもしかしたら、映画のラストでお互いを忘れてしまっていながら、隣り合う電車越しに一目で相手を追い求めてしまった瀧と三葉に重なる感情かもしれません。

劇中では二葉にも映画の三葉と同じような時期があったそうですが、さて、その時はだれと入れ替わっていたんですしょうか。そして二葉はそれを本当に忘れてしまっているんでしょうか。いろいろ想像が膨らむ話です。

この話で語られるのはこのほかに、

  • 娘への愛情
  • 二葉との別れと議会進出への真相
  • なぜ最後、三葉の説得に応じるに至ったのか

という、映画本編では語られなかった大事な要素が目白押しです

まとめ

四章すべて、各章の主人公と三葉とのつながり、「ムスビ」を表現していることに注目です。 作者の方のブログでも言及されるように、これは「主人公は糸守町」といえるような物語です。

糸守という町で暮らす人、入れかわりでやってきた人、宮水に生まれた人、過去のもろもろで宮水に一度は入り、そして出ていった人。すべては糸守町の物語なのです。

kanoh.cocolog-nifty.com

本書は、映画とは対になる、二重らせんのもう一本の組み紐です。 映画で描かれなかった、でも物語の中で大切なちょっとしたカケラです。

映画には多くの観客でにぎわっていますが、その中でもし少しでもこの舞台のこと、この物語の少しだけ裏側のことが知りたくなったら、いいえ、『君の名は。』が好きになったのなら、読んでみるべき一冊です。

実は今品切れのようですね。 製作サイドもこの人気は予想以上だったのでしょうか。

一部電子書籍マーケットでは販売されているようですので、そちらで購入してみるのもいいかもしれませんね。